おさぜん農園

2021.07.09

コラム:おさぜんの履歴書

コラム

弊社では、「いちご農家応援プロジェクト」と題して、いちご農家になりたい方を積極的に
サポートする事業を行っています。そのため、これからいちご農家になりたいという意志を
お持ちの方とお話する機会が多くあります。

そこで今回は、私がどのような経緯で今に至るのか、を書かせていただこうと思います。

まず、私がいちご農家になりたいと決意したのが20歳の時です。元々、実家が梨を栽培する農家で、
農家を継ぐとなると、梨のみに頼った経営では厳しい(収穫時期が夏場のみと限定され、
台風等の自然災害の影響を色濃く受けるため)と考え、梨ともう一つ、経営の柱になる農作物は何か、
と考えていました。ちなみに、梨の販売方法は全て直売でした。

京都府八幡市は以前、梨の産地として知られ、市内には沢山の梨農家がいて、
その土地に住む方々は、夏になると梨を食べる、そういった文化が根付いた場所でした。
そのため、きちんと美味しい梨を作ると、一度食べていただいたお客様はリピーターとなっていただき、
それが数十年続いたので、私が携わり始めた時には、毎年決まったお客様に決まった量の梨を
ご購入いただく、そのような形で販売しておりました。

「甘くて瑞々しくて美味しかったよ」
「ここの梨を食べたら、他の梨は食べられへんわ」
など、お客様に温かいお声をかけていただいていたので、
「お客様のご期待に応えるために私も美味しい梨を作ろう」
という想いで毎年、栽培しておりました。

今思うと、この時の経験が私の原点であり、梨からいちごに変わっても、
「お客様に喜んでいただきたい」という想いはずっと変わらず、最も大切にしている部分だと思います。

市場出荷(JA出荷)型の農業の場合は、自分が作った農作物を市場に持ち込み、
そこで市況に見合った価格が決められ、仲卸業者に売られています。その仕組みですと、
農家は自分の作った農作物がどこに流通しているか、どこで販売されているのか、
お客様の評価はどうなのか、といった事にあまり関心をもたず、
売上に関わる【量】を重視した栽培に傾倒しがちです。

この場合のお客様は、消費者ではなく、市場(JA出荷)担当者になるので、
その方々に喜んでいただくことが目的になるのですが、実際に食べる事はされないので、
見た目(出荷形態)や量に着目されるのは当然かもしれません。

翻って、梨については、前述しましたとおり、お客様が消費者の方でしたので、
一番の関心は【味】でした。多少、形が変形していたり、熟しすぎている梨は
市場では規格外となり出荷できませんが、味は変わらず美味しいので、お客様に
定価より安く販売していました。
実際に、通常より安く買える、ということで、そういった梨目当てで
買いに来られるお客様もいらっしゃいましたね。

このように、販売する相手によって、求められる農作物の状態が異なるので、
それに合わせて栽培していかなければなりません。

梨以外の農作物を探していた私は、
「市場出荷型の農業ではなく、両親がこれまで実践していた直接販売型の農業をしたい」
「お客様に喜んでいただきやすいのは、野菜ではなく果物」
「梨の時期が夏場なので、収穫時期が被らない冬から春にできるもの」

という様々な条件から、【いちご】に辿り着きました。

よく、なぜ【いちご】をはじめられたのですか、と聞かれるのですが、
それは、都市近郊で代々梨を直接販売してきたDNAが私にも伝わり、
導かれたものだと認識しております。

そんなこんなで決意したのですが、当時(2005年頃)京都府下は勿論の事、
関西ではいちご栽培は主流ではなく、いちご農家は数少ないものでした。
また、私がしたいと考えていた【高設栽培】を行っているいちご農家は数える程度で、
勉強するにも教えてくれる所がありませんでした。

しかし、全国に目を向けるといちご栽培が盛んな地域があり、各地のいちご農家の方に
アポイントを取り、視察させていただき、岡山県で観光いちご狩り園を経営されていた
会社に就職させていただき、その後、約2年間の研修を経て、23歳の時に、
家業を継ぐ形で【新規就農】いたしました。

さて、ここからは、いよいよいちご農家になるために、一つずつ階段を上っていくのですが、
やるべきことはざっと以下の通りです。

1 農地を決める(探す)
2 資金を集める(補助金を活用する)
3 栽培ハウスを建設する
4 いちご栽培を開始する

まず、最初にするべきことはいちごを栽培するための【農地】を探し、決める事です。
特に非農家の方の場合は苦戦されるかもしれません。

農地探しの条件としましては、
・ある程度まとまった農地(可能であれば、20a~30aの農地)であること
・周りに太陽を遮る障害物(山、建物)がないこと
・インフラ(水、電気)が整っていること、もしくは整えることが可能なこと
が挙げられます。

また、ハウス内の日当たりが均等になるという意味合いで、南北方向に長い農地であったり、
観光農園をお考えの場合は、主要道路に面しているなど、好条件を挙げれば、キリがありません。

実際に農地を探していくと、なかなか条件の整った農地は探すのに苦労すると思われますので、
どこかで折り合いをつけ、まずはいちご栽培をはじめる、ことが大切です。
農地探しの方法については、各地域の農業委員会や農地中間管理機構(農地バンク)に
問い合わせる、などがあります。

ちなみに、私の場合は元々農家であったため、候補農地はすでにありました。
今思うと、物凄く恵まれた状況だったと思いますし、ご先祖様に感謝しかありませんね。

農地が決まれば、【資金】集めです。
率直に申しまして、いちご栽培を始めるための最初にかかる設備投資費用は膨大です。
したがって、新規就農を志す方の多くは補助金や農業融資を活用して、ハウスを建てることになると思います。
そのため、これらの申請書作成や関係機関との調整などに6か月~1年は最低かかると思います。
特に、実績のない新規就農の場合は、実現可能性の高い事業計画を作成し、
ご協力いただく方々に信用していただく事が賢明です。

様々な補助金や融資についての情報は各地域に新規就農支援窓口がありますので、
そちらにご相談されることをおすすめします。
但し、闇雲に聞きに行くのではなく、農林水産省や各都道府県のホームページに
活用できそうな補助金を事前に調べたり、実際にやるとなった場合、
移住ということも考えられるので、その場合にどうするのか、など、
下調べをした上で、ある程度、ご自身の計画を伝えられるようにしておいた方がよいでしょう。

私の場合は、ここで非常に苦労しました。
その当時、京都府下で高設栽培でのいちご農家が極端に少なく、前例がない(少ない)
ということもあり、実現可能性が低いと判断され、私自身もその意見に反論するだけの
根拠(絶対的な栽培技術、販路など)を持ち合わせていなかったこともあり、
途中でいちご栽培計画は打ち切りになりかけました。
20代半ばの若造が、どんな夢見事を言っているんだ、と思われていたかもしれませんね。

そこから紆余曲折あり、何とか皆様にご協力いただけるようになり、新規就農に向けての
議論を再開することができ、結果的に【青年等就農資金】(当時は新規就農支援資金)を活用して、
いちごハウスの建設ができるようになりました。

これから新規就農をお考えの方は【農地】探しと【資金】集めは、窓口が同じ場合が多いので、
同時並行に進められてもよいのではと思います。また、その土地で腰を据えて、
継続的にいちご栽培をやっていくことになりますので、時間をかけてじっくり
考えながら進めていかれればと思います。

この2点が決まれば、いよいよハウス建設です。
この前段階として、予算内で最高の設備を作れるよう、数回にわたり見積もり合わせを
していくことになると思います。
美味しいいちごをたくさんつくるためには、ビニールハウスと栽培システムは勿論のこと、
様々な設備を投入し、いちごに適した環境を整える必要があります。
それを予算内に抑えるため、各設備の費用対効果を検証し、
取捨選択していかなければなりません。(潤沢な資金があれば別ですが…)

※農業用ハウスやいちご高設栽培システムについては、今後別のコラムで詳しく書かせていただきます。

ハウス業者に視察を依頼し、ビニールハウスやいちご栽培システム見学、
設備の勉強会等に参加し、ご自身の考えのもと、最高のいちごハウス建設を心掛けましょう。
私の場合、とにかく沢山視察に行きました。
資材メーカー等の紹介でいちご農家の方を訪問させていただき、ハウスや栽培システムの事、
いちご栽培の事を、聞いて聞いて聞きまくりましたね。運が良かったと思いますが、
訪問先の農家の方は皆様、本当に親切にご対応いただいた方ばかり、
もし私も同じような立場になったら、自分がしてもらったように対応しなければいけないな、
と視察しながら思いました。

さて、最後はいよいよ【いちご栽培】です。
いちご栽培については、地域の普及センターや先輩農家、研修先の農家、
栽培システムメーカー担当者など、いちごに詳しい方々から情報を集めたり、
実地研修を進められると良いでしょう。
いちご栽培は1年通じて行うものですので、研修については、農地探しや資金集めを
している最中に並行して行うべきかと思います。

私の場合、当時、梨栽培も並行して行っておりましたので、研修は一切せず、
いちごに詳しい人に聞いたり、いちごの関する本や資料を読んだりしましたが、
あとは【実践】あるのみ、で栽培しました。

知識より体得を重視する
たとえ多くの知識を得たとしても、【実践】に勝るものはない、ということです。

病害虫が大量に発生したり、台風でビニールハウスが飛ばされたり、
最も大切な苗つくりに大失敗したり、十数年のいちご栽培の中で沢山の失敗や苦労を重ねてきましたが、
それらの経験があったからこそ、今があります。

したがって、はじめていちご栽培に取り組まれる方も失敗を恐れず、
とにかく【実践】することを意識して、目の前のいちごに真摯に向き合っていただければと思います。

計画途中、栽培途中は「本当にいちごができるんだろうか」と不安感で胸が苦しく、
心が折れてしまいそうになるかもしれません。

それでも、想像してください。
いちご1粒できたときの感動を。
それまでの苦労を全て払拭してくれるほど、そのいちごの価値は絶大なものです。

その1粒を夢見て頑張っていく、そんな人生も素敵だなと思います。






いちごの新規就農者を支援するいちご農家応援プロジェクトに関してのお問合せなどは、
こちらの記事をご覧ください。

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